2011年10月25日
第4回ムセイオン楕円堂講座
10月16日(日)、静岡舞台芸術公園と静岡芸術劇場において、第4回ムセイオン楕円堂講座が行われた。

カチカチ山に集合し、いざ、野外劇場「有度」の見学へ。


野外劇場では、客席に座って、成島芸術局長から、野外劇場やSPACについての話を聞いた。


次に、実際にステージに上がって、実際に声を出す体験をした。
野外劇場の次は楕円堂へ。

このムセイオンの講座の題名にもついている「楕円堂」。
富士見の間で、楕円堂の説明を聞いた。

楕円堂には栗の木が使われているという。何度か観劇に訪れたことがあるが、そのことは初めて知った。
楕円堂内部


楕円堂を後にして、再びカチカチ山へ。
カチカチ山で、SPAC芸術総監督・宮城聰氏の話を聞いた。

静岡では、まず劇団ができて、その劇団が上演するために、劇場が作られた。
つまり、日本でよくみられる、劇場やホールを先に作って、それで終わり、というものではない。
SPACは日本においては殊に珍しい存在ではあるが、ヨーロッパではごく当たり前のことである。
カチカチ山での講話ののち、静岡芸術劇場に移動した。

芸術劇場では、ソポクレス作、小野寺修二演出『オイディプス』とテネシー・ウィリアムズ作、ダニエル・ジャンヌトー演出『ガラスの動物園』の稽古を見学した。
『オイディプス』は冒頭の部分の稽古を見学した。
いかにしてひとつの劇を創り上げていくのか、ということを垣間見ることができた。
『ガラスの動物園』は最初の2幕の公開であった。
ほんの少し観ただけで、続きを観に行きたくなった。
この日は、まるで旅先から揺られて帰ってくるような、あるいは、手作りの上質なソファに深く沈んで、ズービン・メータが振る、マーラーの長くて壮大な交響曲を聴き終えたときのような、心地よさを感じた。
なかなか舞台芸術公園までは足を運びづらいが、機会があれば、その周辺の散策もかねて行きたいと思った。

文:谷口政弘
写真:武田明音

カチカチ山に集合し、いざ、野外劇場「有度」の見学へ。


野外劇場では、客席に座って、成島芸術局長から、野外劇場やSPACについての話を聞いた。


次に、実際にステージに上がって、実際に声を出す体験をした。
野外劇場の次は楕円堂へ。

このムセイオンの講座の題名にもついている「楕円堂」。
富士見の間で、楕円堂の説明を聞いた。

楕円堂には栗の木が使われているという。何度か観劇に訪れたことがあるが、そのことは初めて知った。
楕円堂内部


楕円堂を後にして、再びカチカチ山へ。
カチカチ山で、SPAC芸術総監督・宮城聰氏の話を聞いた。

静岡では、まず劇団ができて、その劇団が上演するために、劇場が作られた。
つまり、日本でよくみられる、劇場やホールを先に作って、それで終わり、というものではない。
SPACは日本においては殊に珍しい存在ではあるが、ヨーロッパではごく当たり前のことである。
カチカチ山での講話ののち、静岡芸術劇場に移動した。

芸術劇場では、ソポクレス作、小野寺修二演出『オイディプス』とテネシー・ウィリアムズ作、ダニエル・ジャンヌトー演出『ガラスの動物園』の稽古を見学した。
『オイディプス』は冒頭の部分の稽古を見学した。
いかにしてひとつの劇を創り上げていくのか、ということを垣間見ることができた。
『ガラスの動物園』は最初の2幕の公開であった。
ほんの少し観ただけで、続きを観に行きたくなった。
この日は、まるで旅先から揺られて帰ってくるような、あるいは、手作りの上質なソファに深く沈んで、ズービン・メータが振る、マーラーの長くて壮大な交響曲を聴き終えたときのような、心地よさを感じた。
なかなか舞台芸術公園までは足を運びづらいが、機会があれば、その周辺の散策もかねて行きたいと思った。

文:谷口政弘
写真:武田明音
2011年10月25日
第3回ムセイオン楕円堂講座「絵と詩歌のなかの汽車」
10月9日、県立美術館講堂において、第3回ムセイオン楕円堂講座が行われた。
題して「絵と詩歌のなかの汽車」。
はじめに、芳賀徹・県立美術館館長が、詩歌と鉄道について講演された。

鉄道唱歌の詩や石川啄木の短歌、萩原朔太郎の詩などを取り上げて、鉄道がどれほど人々にセンセーションを与え、鉄道が登場する前に存在しなかった感情を与えたかをお話しされた。
次に、小針由紀隆・県立美術館学芸部長が、フランスにおける絵と鉄道について講演された。

鉄道の音や速さが当時の人々に興奮と熱狂をもたらしたという。
鉄道や自動車の速さに慣れてしまった現代の私には、当時の心持を想像するのは難しい。
また、小針学芸部長は、モネほど鉄道に興味を持ち、「駅」を取り上げた画家はいない、とお話しされた。
モネは、ある時期に集中的にフランスのサン・ラザール駅を描いたという。
いったい鉄道の何がそれほどまでにモネの興味をそそらせたのか、とても興味深い。
最後は芳賀館長、小針学芸部長、立田洋司・県立大学教授の3人によるトークセッションが行われた。
トークセッションでは、小針学芸部長が講演のなかで取り上げた、ウィリアム・ターナーの絵画『雨、蒸気、速度 グレート・ウェスタン鉄道』の話題で盛り上がった。
立田先生が、その絵画のなかに骸骨が描かれていることを指摘した。小針学芸部長と芳賀館長は気づいておられなかったようだ。
もし、ロンドン・ナショナルギャラリーにある、ターナーのその絵画を見る機会があれば、骸骨を探してみてはいかがでしょうか。
立田先生と芳賀館長の掛け合いはまるで高速モノレールのように、しかし幾ばくも進めど停車場(ていしゃば=駅)の見えないようであった。
文:谷口政弘、写真:武田明音
題して「絵と詩歌のなかの汽車」。
はじめに、芳賀徹・県立美術館館長が、詩歌と鉄道について講演された。

鉄道唱歌の詩や石川啄木の短歌、萩原朔太郎の詩などを取り上げて、鉄道がどれほど人々にセンセーションを与え、鉄道が登場する前に存在しなかった感情を与えたかをお話しされた。
次に、小針由紀隆・県立美術館学芸部長が、フランスにおける絵と鉄道について講演された。

鉄道の音や速さが当時の人々に興奮と熱狂をもたらしたという。
鉄道や自動車の速さに慣れてしまった現代の私には、当時の心持を想像するのは難しい。
また、小針学芸部長は、モネほど鉄道に興味を持ち、「駅」を取り上げた画家はいない、とお話しされた。
モネは、ある時期に集中的にフランスのサン・ラザール駅を描いたという。
いったい鉄道の何がそれほどまでにモネの興味をそそらせたのか、とても興味深い。
最後は芳賀館長、小針学芸部長、立田洋司・県立大学教授の3人によるトークセッションが行われた。
トークセッションでは、小針学芸部長が講演のなかで取り上げた、ウィリアム・ターナーの絵画『雨、蒸気、速度 グレート・ウェスタン鉄道』の話題で盛り上がった。
立田先生が、その絵画のなかに骸骨が描かれていることを指摘した。小針学芸部長と芳賀館長は気づいておられなかったようだ。
もし、ロンドン・ナショナルギャラリーにある、ターナーのその絵画を見る機会があれば、骸骨を探してみてはいかがでしょうか。
立田先生と芳賀館長の掛け合いはまるで高速モノレールのように、しかし幾ばくも進めど停車場(ていしゃば=駅)の見えないようであった。
文:谷口政弘、写真:武田明音
2011年09月16日
第1回楕円堂講座「システィーナ礼拝堂天井画とその魅力」
7月31日(日)午後13時30分から15時45分にかけて、今年度のムセイオン楕円堂講座が静岡県立大学小講堂にて開講。県立大学・立田洋司教授と写真家・岡村崔氏の講演が行われた。
あいさつする県立大学・木苗学長

「オカムラはミケランジェロのベールを剥がしてしまった」
イギリスの美術史家ケネス・クラークが写真家・岡村崔氏を評した言葉だ。
講義する岡村氏


岡村氏はヴァチカンのシスティーナ礼拝堂の壁画や天上画をミケランジェロが描いたときと同じ目線、同じ高さで撮影された。
それはシスティーナ礼拝堂の壁・天井を洗浄する前に、その姿を記録するという歴史的な役割を果たしたことにもなった。
そして、礼拝堂の天井画の洗浄の前と後に写真を撮り終えた岡村氏はこう言われた。
「(洗浄前)神は厳しい顔をしていたが、洗浄後、(神の)眼に覇気がなくなった」
「(壁画を)洗浄後、きれいになったが、時が失われた」
岡村氏のこの言葉に、私は「なるほど」と感じた。
たしかに、蝋燭のすすを洗浄することで時代を感じることができなくなるのかもしれない。
しかし、本物を見ていないので何とも言えない。システィーナ礼拝堂へ行って、実際にミケランジェロの絵を見てみなければと思った。
講義する立田先生

立田先生は、主に古代ギリシャについて講義された。
また、ミケランジェロについては、古代ギリシャから1000年を経て現れた天才、と述べられた。
ミケランジェロは、古代ギリシャよりももっと人間的な物を自分の作るものの中にたたきこんだが故である。
また、古代ギリシャからローマに中心が移ってから、大量生産・消費社会へと変貌したとおっしゃった。この間に、古代ギリシャ型芸術が衰退していったそうだ。
私は直観的に、現代社会のことを思い浮かべた。
もし、おおよその国々が大量生産・消費社会に変貌してしまったら、もしくは産業という側面で「発展」しきったら、もう一度、かの西欧におけるルネサンスのようなものが、どこかしかで起きるのではないだろうか、と想像してしまった。
期待故の想像かもしれない。
ミケランジェロはどのような面持ちで、システィーナ礼拝堂の天井画を描いたのだろうか。
もう一度、「古代復興」が起きないだろうか。
そのようなことを心に浮かべつつ、第1回ムセイオン楕円堂講座の会場を後にした。
谷口政弘
2011年08月04日
ムセイオン楕円堂講座が始まりました

7月31日より「ムセイオン楕円堂講座」が、静岡リビング新聞社の創刊30周年記念とタイアップし、開講しました。
写真家の岡村崔さんをはじめ、県立大学教授・立田洋司さん、県立美術館館長・芳賀徹さん、SPAC芸術総監督・宮城聰さんなど、多彩な講師陣による魅力の講座ぞろいです。
日 時 : 2011年7月31日(日曜日) 13時30分~15時45分
場 所 : 静岡県立大学 小講堂
講 師 : 岡村崔(地中海学会会員、写真家)、立田洋司(静岡県立大学教授)ほか
日 時 : 2011年9月5日(月曜日)~ 7日(水曜日) ※希望者のみ。別料金
講 師 : 岡村崔(地中海学会会員、写真家)、立田洋司(静岡県立大学教授)
日 時 : 2011年10月9日(日曜日) 13時30分~15時45分
場 所 : 静岡県立美術館
講 師 : 芳賀徹(県立美術館館長)、小針由紀隆(県立美術館学芸部長)、立田洋司(静岡県立大学教授)
日 時 : 2011年10月16日(日曜日) 時間未定
場 所 : 舞台芸術公園および芸術劇場
講 師 : 宮城聰(SPAC芸術総監督)、成島洋子(SPAC芸術局長)
日 時 : 2011年12月18日(日曜日) 15時00分 ~ 17時15分
場 所 : 舞台芸術公園屋内ホール 「楕円堂」
講 師 : 立田洋司(静岡県立大学教授)、宮城聰(SPAC芸術総監督)
第6回 「修道院とビザンチン文化~ヨーロッパ文化を理解する鍵」
日 時 : 2012年1月29日(日曜日) 13時30分 ~ 15時45分
場 所 : 静岡県立大学 小講堂
講 師 : 立田洋司(静岡県立大学教授)ほか
現在、申し込みを好評受け付け中です。
また第4回以降は、各回個別に募集も行います。
個別にお申込みされる方は、ムセイオン楕円堂講座事務局までお問い合わせください。
【お申込み】
静岡リビング新聞社
受講料:5,000円(第2回は希望者のみ。別料金)
TEL:054-255-1231(受付時間:平日10 時~17時)
【内容についてのお問い合わせ】
舞台芸術センター内 ムセイオン楕円堂講座事務局
TEL:054-203-5735 (受付時間:平日10時~18時)
2011年08月03日
「ムセイオン楕円堂講座」 大塚国際美術館と倉敷・岡山ツアー

創刊30周年の静岡リビング新聞社が、「ムセイオン静岡」とタイアップして開催する、文化・芸術の新しい学びの場「ムセイオン楕円堂講座」。
9月5日(月)~9月7日(水)に実施される同講座2回目の研修旅行「大塚国際美術館と倉敷・岡山ツアー」2泊3日の旅の参加者を募集します。
初日の京都市内の寺院では、日本が世界に誇る国宝級の絵画などを鑑賞。
昼食は、老舗の「河道屋養老」で看板料理「養老鍋」を賞味します。
二日目は、ヴァチカン・システィーナ礼拝堂天井画などを立体感・臨場感を持って楽しめる、世界でも類を見ないという大塚国際美術館を満喫。
三日目は、魅力たっぷりの倉敷美観地区にある大原美術館や、岡山市立オリエント美術館を巡ります。
講師の写真家・岡村崔氏と静岡県立大学教授・立田洋司が同行します。
【旅行概要】
旅行日: 9月5日(月)~9月7日(水)
旅行代金: 一般価格88,000円 受講生価格85,000円
(2人1室の場合。1人1室は9,000円増し)
※交通費、保険、食事の朝2回・昼1回・夕1回を含む。往復新幹線利用
最少催行人数:25人
◆1日目
静岡駅(8:12発)…京都駅…相国寺・承天閣美術館…河道屋養老(昼食)…智積院…養源院…〈淡路島経由〉…鳴門市〈泊〉「 ルネッサンスリゾートナルト」/夕食あり
◆2日目
ホテル…大塚国際美術館/開館から閉館まで(自由昼食)…〈瀬戸大橋〉…倉敷〈泊〉「倉敷アイビースクエア」 ※夕食は各自自由
◆3日目
ホテル…倉敷美観地区(大原美術館など見どころ満載)…自由昼食…岡山市立オリエント美術館…岡山駅…静岡駅(20:31着)
【お申込み・お問い合わせ】
静鉄観光サービス (担当/第1 営業チーム 山口)
TEL:054-251-6415 (9:30~17:30 日・祝日定休)
※「ムセイオン楕円堂講座」についての詳細は静岡リビング新聞社へ
TEL:054-255-1231(受付時間:平日10 :00~17:00)
2011年07月16日
立田研究室関西研修旅行
6月9日~11日、国際関係学部立田研究室では、3泊2日で関西方面にゼミ研修旅行を実施した。
今回は、立田研究室に所属する学生4名が参加。
9日午前に静岡を出発し、お昼頃に三重県の伊賀上野につき、昼食をとった後に奈良県を目指した。

昼に食べた伊賀上野名物「焼き豆腐」
奈良県では、まず宇陀市の大宇陀というところに立ち寄る。
大宇陀は、昔ながらの町屋が並ぶ通りが残る場所で、本葛を作る『黒川本家』と『森野薬草園』という二つの葛屋さんがある。
2つのお店に立ち寄って本葛粉を購入。森野薬草園では、裏山の薬草園と葛を作っている工場を見学した。


大宇陀には古い町屋が残る
立田ゼミでは、「食」にも注目している。今回の関西方面の旅では関東との味の濃さの違いや、食の素材についても勉強することも一つの目的でもあった。
大宇陀を後にし、次に桜井市の長谷寺に向かった。
長谷寺は「西国三十三所巡礼」の第六番目の寺院だ。最近、JR東海の奈良観光のキャンペーンCM「いま うるわし 奈良」のシリーズで紹介されている寺院でもある。
山門をくぐると、まず、本殿まで続く長い階段≪登廊≫が続く。
登廊を上りきると、本堂と礼堂などがある。
礼堂からは青々とした連山の景色を楽しむことができる。寺の周りには門前町が広がり、とても静かな、心が安らぐ場所だ。


長谷寺参拝後は、奈良市に向かい、この日は奈良公園の近くの「青葉茶屋」に宿泊。
次の日は奈良から岡山の倉敷に向かった。
倉敷には昼ごろ到着し、昼食後、美観地区にある大原美術館を見学。
大原美術館は、画家、児島虎次郎(1881-1929)の業績を記念するために、大原孫三郎(1880-1943)が1930年に設立した美術館だ。
私は以前にも倉敷を訪れて、大原美術館を見学したことがあるが、今回は立田先生の解説付きで、特に、工芸館と東洋館をじっくりと見学した。西洋絵画の収蔵が充実しているのも大原美術館の魅力の一つだが、特に注目すべきなのは工芸館や東洋館だと立田先生は話してくれた。
工芸館には、バーナード・リーチ、富本憲吉、浜田庄司、河井寛次郎、棟方志功、芹沢銈介ら、近代の日本工芸をリードしてきた6人の作家の作品が展示されている。
陶器や磁器は、作り手によって色の使い方や釉薬の使い方が異なり、特徴もよくわかる。
東洋館には中国やガンダーラ地方の仏像や焼き物などが展示されている。規模としては大きくはないが、収蔵されている作品は素晴らしいものばかりである。
また、工芸館と東洋館の建物は、静岡出身の芹沢銈介が設計に携わっているという。

大原美術館工芸館入口
美術館見学後はそれぞれ美観地区の中を散策した。
この日は生憎の雨だった。しかし、雨が降っている中で、古い町屋が続く通りを歩いていると、楽しい気分になった。
これもまた、この地区の魅力の一つなのかもしれない。


立田先生を囲んで。大原美術館前にて。
倉敷では、人が住まなくなった古い町屋の一つを修理して宿泊施設に再生した「御坂の家」に宿泊。NPO法人の「倉敷町屋トラスト」の町屋再生第一号の建物だという。土間にはキッチンやお風呂もあり、自分たちで料理もできる。また、宿泊する人のために倉敷や岡山のガイドブックやパンフレットなども置かれているし、アメニティも充実している。倉敷の人たちの工夫を感じることのできる空間だった。
3日目は、倉敷から瀬戸大橋を超えて、香川県を経由して徳島県鳴門へ向かった。
3日目の目的地は鳴門の「大塚国際美術館」だ。
大塚製薬が会社創立75周年を記念して開いたのがこの美術館。陶板で作られた、西洋の名だたる美術作品の複製が収蔵・展示されている。時代は古代ギリシア~現代まで。
正直、複製品ということで、最初はあまり期待をしていなかった。
しかし、行ってみて、一気にこの美術館の面白さを知った。
特に素晴らしいと感じた点は、イタリア・ギリシア・トルコといった地域に残る、古代の遺跡や聖堂、礼拝堂の内部を再現しているところだ。美術館では再現した場所の展示を「環境展示」と呼んでいる。
たとえば、イタリア、パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂の内部には、13~14世紀にイタリアで活躍した、ジョットが描いた『イエスと聖母の生涯』の壁画の連作が忠実に再現されていた。
また、昨年度の第2回ムセイオン楕円堂講座にて写真家の岡村崔氏が講演した、ヴァチカンの「システィーナ礼拝堂」や静岡県立美術館の学芸部長、小針由紀隆氏が講演したウルビーノ、ドゥカーレ宮殿内の「モンテフェルトロ公のストゥディオーロ(書斎)」なども再現されている。
その他にも、ポンペイの「秘儀の間」、タルクィニアの「鳥占い師の墓」というエトルリア人が作った地下墓地、トルコのカッパドキアにある「聖テオドール聖堂」の内部なども再現されている。内部の構造や大きさもほぼオリジナルに近く、まるで実際にその場所を訪れたような感覚に陥った。そして複製技術の高さも圧巻。これこそが、日本人の職人技なのではないだろうかと感じた。

ヴァチカン、システィーナ礼拝堂内部の環境展示

スクロヴェーニ礼拝堂内部の環境展示
また、現在、それら環境展示となっている実際の建物の中には、内部を見学できないものも増えているそうだ。つまり、これらの環境展示は非常に貴重な歴史資料にもなっている。
また、わたしたちは普段から西洋絵画を見る機会は多くあるが、時代や様式の特定されている展示が多く、時代を追いながら作品を見る機会は少ないと思う。一方、大塚国際美術館では、時代背景を追いながら作品を見ることが可能だ。また、西洋美術についてよく知らない方にとってもわかりやすく、美術史の勉強にもなる美術館なのではないだろうか。
大塚国際美術館には1日かけてもすべて見ることができないくらい、多くの作品が展示されている。我々一行も4時間ほど滞在したが、すべての展示を見ることはできなかった。立田先生も「美術館は、一度行ったからヨシと満足してはいけない。何回も足を運んで作品を鑑賞する必要がある。」と、話していた。

ギリシア陶器の絵について説明をしている立田先生
今回のゼミ研修では、美術や歴史、食文化を実際に五感で感じた充実した時間を過ごすことができた。ひとりひとり、今後の卒業論文や研究に向けて、興味・関心が持てる内容を発見できた旅でもあった。
ところで、9月に今回の旅を充実させたムセイオンツアーがおこなわれます。ムセイオン楕円堂講座の一環として一般の方を対象に参加者を募集しているようです。詳しくはまたこのブログ上でもご案内いたします。
加藤志帆
今回は、立田研究室に所属する学生4名が参加。
9日午前に静岡を出発し、お昼頃に三重県の伊賀上野につき、昼食をとった後に奈良県を目指した。
昼に食べた伊賀上野名物「焼き豆腐」
奈良県では、まず宇陀市の大宇陀というところに立ち寄る。
大宇陀は、昔ながらの町屋が並ぶ通りが残る場所で、本葛を作る『黒川本家』と『森野薬草園』という二つの葛屋さんがある。
2つのお店に立ち寄って本葛粉を購入。森野薬草園では、裏山の薬草園と葛を作っている工場を見学した。
大宇陀には古い町屋が残る
立田ゼミでは、「食」にも注目している。今回の関西方面の旅では関東との味の濃さの違いや、食の素材についても勉強することも一つの目的でもあった。
大宇陀を後にし、次に桜井市の長谷寺に向かった。
長谷寺は「西国三十三所巡礼」の第六番目の寺院だ。最近、JR東海の奈良観光のキャンペーンCM「いま うるわし 奈良」のシリーズで紹介されている寺院でもある。
山門をくぐると、まず、本殿まで続く長い階段≪登廊≫が続く。
登廊を上りきると、本堂と礼堂などがある。
礼堂からは青々とした連山の景色を楽しむことができる。寺の周りには門前町が広がり、とても静かな、心が安らぐ場所だ。

長谷寺参拝後は、奈良市に向かい、この日は奈良公園の近くの「青葉茶屋」に宿泊。
次の日は奈良から岡山の倉敷に向かった。
倉敷には昼ごろ到着し、昼食後、美観地区にある大原美術館を見学。
大原美術館は、画家、児島虎次郎(1881-1929)の業績を記念するために、大原孫三郎(1880-1943)が1930年に設立した美術館だ。
私は以前にも倉敷を訪れて、大原美術館を見学したことがあるが、今回は立田先生の解説付きで、特に、工芸館と東洋館をじっくりと見学した。西洋絵画の収蔵が充実しているのも大原美術館の魅力の一つだが、特に注目すべきなのは工芸館や東洋館だと立田先生は話してくれた。
工芸館には、バーナード・リーチ、富本憲吉、浜田庄司、河井寛次郎、棟方志功、芹沢銈介ら、近代の日本工芸をリードしてきた6人の作家の作品が展示されている。
陶器や磁器は、作り手によって色の使い方や釉薬の使い方が異なり、特徴もよくわかる。
東洋館には中国やガンダーラ地方の仏像や焼き物などが展示されている。規模としては大きくはないが、収蔵されている作品は素晴らしいものばかりである。
また、工芸館と東洋館の建物は、静岡出身の芹沢銈介が設計に携わっているという。

大原美術館工芸館入口
美術館見学後はそれぞれ美観地区の中を散策した。
この日は生憎の雨だった。しかし、雨が降っている中で、古い町屋が続く通りを歩いていると、楽しい気分になった。
これもまた、この地区の魅力の一つなのかもしれない。


立田先生を囲んで。大原美術館前にて。
倉敷では、人が住まなくなった古い町屋の一つを修理して宿泊施設に再生した「御坂の家」に宿泊。NPO法人の「倉敷町屋トラスト」の町屋再生第一号の建物だという。土間にはキッチンやお風呂もあり、自分たちで料理もできる。また、宿泊する人のために倉敷や岡山のガイドブックやパンフレットなども置かれているし、アメニティも充実している。倉敷の人たちの工夫を感じることのできる空間だった。
3日目は、倉敷から瀬戸大橋を超えて、香川県を経由して徳島県鳴門へ向かった。
3日目の目的地は鳴門の「大塚国際美術館」だ。
大塚製薬が会社創立75周年を記念して開いたのがこの美術館。陶板で作られた、西洋の名だたる美術作品の複製が収蔵・展示されている。時代は古代ギリシア~現代まで。
正直、複製品ということで、最初はあまり期待をしていなかった。
しかし、行ってみて、一気にこの美術館の面白さを知った。
特に素晴らしいと感じた点は、イタリア・ギリシア・トルコといった地域に残る、古代の遺跡や聖堂、礼拝堂の内部を再現しているところだ。美術館では再現した場所の展示を「環境展示」と呼んでいる。
たとえば、イタリア、パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂の内部には、13~14世紀にイタリアで活躍した、ジョットが描いた『イエスと聖母の生涯』の壁画の連作が忠実に再現されていた。
また、昨年度の第2回ムセイオン楕円堂講座にて写真家の岡村崔氏が講演した、ヴァチカンの「システィーナ礼拝堂」や静岡県立美術館の学芸部長、小針由紀隆氏が講演したウルビーノ、ドゥカーレ宮殿内の「モンテフェルトロ公のストゥディオーロ(書斎)」なども再現されている。
その他にも、ポンペイの「秘儀の間」、タルクィニアの「鳥占い師の墓」というエトルリア人が作った地下墓地、トルコのカッパドキアにある「聖テオドール聖堂」の内部なども再現されている。内部の構造や大きさもほぼオリジナルに近く、まるで実際にその場所を訪れたような感覚に陥った。そして複製技術の高さも圧巻。これこそが、日本人の職人技なのではないだろうかと感じた。

ヴァチカン、システィーナ礼拝堂内部の環境展示

スクロヴェーニ礼拝堂内部の環境展示
また、現在、それら環境展示となっている実際の建物の中には、内部を見学できないものも増えているそうだ。つまり、これらの環境展示は非常に貴重な歴史資料にもなっている。
また、わたしたちは普段から西洋絵画を見る機会は多くあるが、時代や様式の特定されている展示が多く、時代を追いながら作品を見る機会は少ないと思う。一方、大塚国際美術館では、時代背景を追いながら作品を見ることが可能だ。また、西洋美術についてよく知らない方にとってもわかりやすく、美術史の勉強にもなる美術館なのではないだろうか。
大塚国際美術館には1日かけてもすべて見ることができないくらい、多くの作品が展示されている。我々一行も4時間ほど滞在したが、すべての展示を見ることはできなかった。立田先生も「美術館は、一度行ったからヨシと満足してはいけない。何回も足を運んで作品を鑑賞する必要がある。」と、話していた。

ギリシア陶器の絵について説明をしている立田先生
今回のゼミ研修では、美術や歴史、食文化を実際に五感で感じた充実した時間を過ごすことができた。ひとりひとり、今後の卒業論文や研究に向けて、興味・関心が持てる内容を発見できた旅でもあった。
ところで、9月に今回の旅を充実させたムセイオンツアーがおこなわれます。ムセイオン楕円堂講座の一環として一般の方を対象に参加者を募集しているようです。詳しくはまたこのブログ上でもご案内いたします。
加藤志帆
2011年07月13日
「椿姫――何日君再来」を観劇して
今回から、このブログを担当する、静岡県立大学国際関係学部2年の谷口政弘です。
よろしくお願いします。
6月11日、静岡芸術劇場でデュマ・フィス原作、鈴木忠志演出『椿姫――何日君再来』の公演が行われた。
「椿姫」はヴェルディのオペラで有名だ。
原作は、デュマ・フィス自身の体験に基づいて書かれた戯曲である。
今回、鈴木忠志は流行歌劇という手法で、
「なぜ一人の青年が精神の異常をきたし、病院に入ることになったかをアルマンの幻想と回想を通し(*1)」て、
今回の「椿姫――何日君再来」を作り上げた。
舞台設定は台湾の緑島。
舞台での言葉はほとんどが北京語と台湾語であった。
青年アルマンの回想と幻想によって、
ストーリーはおおよそ原作の通りに進んでいく。
青年アルマンは高級娼婦マルグリットに一目惚れする。
マルグリットにその気はなかったが、やがてアルマンの純粋な愛に惹かれていく。
やがて二人はともに住むようになる。
しかし、そのことを知ったアルマンの父親がアルマンの不在の時にマルグリットを訪ね、
娘の縁談のため、自分の息子(アルマン)と分かれてほしいとマルグリットに言う。
マルグリットは一度、固辞するものの、最後にはその願いを聞き入れる。
マルグリットはアルマンへの手紙を書きつけ、アルマンの元を去る。
事情を知らないアルマンは、マルグリットから突然、一方的に別れを告げられたと思い込み、激しい怒りの念にかられる。
アルマンは社交界に戻ったマルグリットを追ってくる。
パトロンの男爵に手を引かれてやってきたマルグリットをアルマンは見つける。
マルグリットがその男爵を愛しているという言葉を聞いて、アルマンは逆上する。
そして、アルマンは、公衆の面前で、マルグリットを侮辱する。
マルグリットは耐え切れず、床に伏してしまう。
父親から真相を聞かされたアルマンは、己のなしたことを後悔し、
難病で臥せっているマルグリットの元に駆けつけるも、時すでに遅し。
マルグリットは逝ってしまった。
青年アルマンと高級娼婦マルグリットの愛の物語は、鈴木忠志の手によって、台湾の複雑な状況をほのめかすものと変貌する。
タイトルにつく「何日君再来」。とても有名で、中国のみならず、日本の歌手もカヴァーしている。
それにしても、「君」とは何を指すのか。
その解釈により、この曲もまた、時代に翻弄されてきた。
中国大陸の日本統治時代、日本はこの曲の「君」とは、同胞を解放してくれる「蒋介石」のことを指すとして、「何日君再来」を歌うのを禁止した。
中国共産党政府は「君」を蒋介石率いる国民党と解釈し、この歌を禁じた。
国民党政府は「君」を「共産党」と解釈し、この歌を禁じた。
翻弄されてきた「何日君再来」。そして、台湾。
劇中、アルマンの父がマルグリットに息子と別れるよう迫る場面で、
マルグリットのフレーズが北京語から台湾語に切り替わる場面がある。
台湾で、この演目が上演されたときに、台湾人に大きな熱狂をもたらしたことは想像に難くない。
そして、舞台となった緑島は、政治犯の収容所があった場所だ。
これもまた、台湾の辿ってきた歴史を物語る。
それにしてもなぜ、アルマンの父親役は2人の役者が演じていたのだろうか?
なぜ、マルグリットは急に台湾語を話したのだろうか?
疑問はつきない。なにかひっかかる。
上演ののち、SPAC芸術総監督宮城聰氏と今回の舞台を演出した、鈴木忠志氏のアフター・トーク・ショーが行われた。
一番印象的だったのは、「世界は精神病院」という言葉だった。
「人間はみんなどっかおかしくて、それを発症した人が芸術家。」という言葉には、
思わず「なるほど」とこころの中で呟いてしまった。
それにしても、タイトルの「何日君再来」。今の日本にとって「君」とは?と考えてしまう。
物語では、精神が壊れてしまったアルマンには会えない。
もしかしたら、と思いつつ、劇場を後にした。

*1. 「椿姫――何日君再来」公演パンフレットより。
よろしくお願いします。
6月11日、静岡芸術劇場でデュマ・フィス原作、鈴木忠志演出『椿姫――何日君再来』の公演が行われた。
「椿姫」はヴェルディのオペラで有名だ。
原作は、デュマ・フィス自身の体験に基づいて書かれた戯曲である。
今回、鈴木忠志は流行歌劇という手法で、
「なぜ一人の青年が精神の異常をきたし、病院に入ることになったかをアルマンの幻想と回想を通し(*1)」て、
今回の「椿姫――何日君再来」を作り上げた。
舞台設定は台湾の緑島。
舞台での言葉はほとんどが北京語と台湾語であった。
青年アルマンの回想と幻想によって、
ストーリーはおおよそ原作の通りに進んでいく。
青年アルマンは高級娼婦マルグリットに一目惚れする。
マルグリットにその気はなかったが、やがてアルマンの純粋な愛に惹かれていく。
やがて二人はともに住むようになる。
しかし、そのことを知ったアルマンの父親がアルマンの不在の時にマルグリットを訪ね、
娘の縁談のため、自分の息子(アルマン)と分かれてほしいとマルグリットに言う。
マルグリットは一度、固辞するものの、最後にはその願いを聞き入れる。
マルグリットはアルマンへの手紙を書きつけ、アルマンの元を去る。
事情を知らないアルマンは、マルグリットから突然、一方的に別れを告げられたと思い込み、激しい怒りの念にかられる。
アルマンは社交界に戻ったマルグリットを追ってくる。
パトロンの男爵に手を引かれてやってきたマルグリットをアルマンは見つける。
マルグリットがその男爵を愛しているという言葉を聞いて、アルマンは逆上する。
そして、アルマンは、公衆の面前で、マルグリットを侮辱する。
マルグリットは耐え切れず、床に伏してしまう。
父親から真相を聞かされたアルマンは、己のなしたことを後悔し、
難病で臥せっているマルグリットの元に駆けつけるも、時すでに遅し。
マルグリットは逝ってしまった。
青年アルマンと高級娼婦マルグリットの愛の物語は、鈴木忠志の手によって、台湾の複雑な状況をほのめかすものと変貌する。
タイトルにつく「何日君再来」。とても有名で、中国のみならず、日本の歌手もカヴァーしている。
それにしても、「君」とは何を指すのか。
その解釈により、この曲もまた、時代に翻弄されてきた。
中国大陸の日本統治時代、日本はこの曲の「君」とは、同胞を解放してくれる「蒋介石」のことを指すとして、「何日君再来」を歌うのを禁止した。
中国共産党政府は「君」を蒋介石率いる国民党と解釈し、この歌を禁じた。
国民党政府は「君」を「共産党」と解釈し、この歌を禁じた。
翻弄されてきた「何日君再来」。そして、台湾。
劇中、アルマンの父がマルグリットに息子と別れるよう迫る場面で、
マルグリットのフレーズが北京語から台湾語に切り替わる場面がある。
台湾で、この演目が上演されたときに、台湾人に大きな熱狂をもたらしたことは想像に難くない。
そして、舞台となった緑島は、政治犯の収容所があった場所だ。
これもまた、台湾の辿ってきた歴史を物語る。
それにしてもなぜ、アルマンの父親役は2人の役者が演じていたのだろうか?
なぜ、マルグリットは急に台湾語を話したのだろうか?
疑問はつきない。なにかひっかかる。
上演ののち、SPAC芸術総監督宮城聰氏と今回の舞台を演出した、鈴木忠志氏のアフター・トーク・ショーが行われた。
一番印象的だったのは、「世界は精神病院」という言葉だった。
「人間はみんなどっかおかしくて、それを発症した人が芸術家。」という言葉には、
思わず「なるほど」とこころの中で呟いてしまった。
それにしても、タイトルの「何日君再来」。今の日本にとって「君」とは?と考えてしまう。
物語では、精神が壊れてしまったアルマンには会えない。
もしかしたら、と思いつつ、劇場を後にした。
*1. 「椿姫――何日君再来」公演パンフレットより。
2011年03月15日
静岡県立大学特別公開講座「薬草のお話」参加者募集
静岡県立大学では、開かれた大学の一環として、日ごろの教育・研究の成果を地域社会に還元するとともに、県民に生涯学習の機会を提供するため、公開講座を開催しております。今回、平成23年度に静岡県立大学が創立25年目を迎えるため、その関連事業(プレイベント)として、特別公開講座「薬草のお話」を開催、ムセイオン静岡が協力しています。
お申し込み、詳細については、静岡県立大学のホームページをご覧ください。
画像をクリックすると、PDFファイルが別ウインドウで開きます。
2011年01月27日
第2回 ムセイオン楕円堂講座
1月10日(月)、13時から16時半すぎまで、静岡県立大学小講堂にて、第2回ムセイオン楕円堂講座が行われた。学生・一般、約100名が受講した。
今回のテーマは、「日本人の知らないルネッサンスの見方」。静岡県立大学・立田洋司(たつた ようじ)先生を講師に、写真家・岡村崔(おかむら たかし)氏と静岡県立美術館・小針由紀隆(こはり ゆきたか)学芸部長をゲストに迎えた。

木苗直秀静岡県立大学学長の挨拶

受講者に講義を行う立田先生
岡村崔氏は長年イタリアを中心に美術作品や教会を撮影してきた写真家。特に、ヴァチカン・システィーナ礼拝堂のミケランジェロの壁画を撮影した功績は、世界でも高く評価されている。イギリス美術史家ケネス・クラークは、「岡村はミケランジェロのベールを剥がしてしまった」という言葉を残したそうだ。
当日、小講堂内には、岡村氏自身が撮影したヴァチカンのラファエロ作「アテネ学堂」とボッティチェリ作「春」の写真の大型パネルを展示。2つのパネルと写真スライドを見ながら、岡村氏のイタリアでの貴重な経験や逸話を聞いた――
写真の撮影方法も現在とは違い、大型の特殊なカメラを使用。システィーナ礼拝堂での撮影では天井部を撮影するときなど、18メートルほどのやぐらを組み立て、そこに一人で昇り、絵の真下にもぐりこんで撮影。しかも、夕方から夜にかけての数時間、真っ暗な礼拝堂中で、ミケランジェロの偉大な作品に囲まれて、たった一人で。ミケランジェロの亡霊から声をかけられたのでは…と思うくらいに、ミケランジェロの魂が絵の中に残されていることを感じたそうだ。
そして、「アテネの学堂」と「春」の細部写真を見ながら、両作品の解説をしていただいた。今、これらの作品を実際にヴァチカン美術館やウフィッツィ美術館を訪れ、じっくり鑑賞しようとしても、絵に近寄って眺めることや、長時間その場に残って鑑賞するということが難しくなってきている。が、この講義では、登場している人物の表情や、身に着けている装飾品について、植物や、絵の色味など、今までじっくり見ることのなかった点をじっくり観察することができた。

今回寄贈していただいたパネルについて説明される岡村氏
小針氏は、静岡県立美術館開館当初から活躍されてきた学芸員で、静岡や日本の美術館の発展に大きく携わっている方。静岡県立大学でも何度も講義をされ、ムセイオン静岡の主要メンバーを担っている方でもある。ご専門はイタリアを中心とした西洋美術で、イタリアのさまざまな土地を歩き、多くの美術作品の研究を行っている。また、イタリア美術と深く関係する北方フランドル地方やフランスの美術についても研究をされている。
今回の小針氏の講義は、ルネサンス期のウルビーノにおける宮廷美術について――
ウルビーノという街を知っている人は日本ではあまりいない。ウルビーノは、イタリア、マルケ州の内陸の街。当時その地を治めていたモンテフェルトロ家が輩出したフェデリーコ公の時代が一番栄えていた。フェデリーコ公は傭兵隊長(コンドッティエーリ)としてとして活躍していたが、一方で人文主義的教養も備え、芸術庇護にも力を注いだ人物としても有名だった。
小針氏は、ルネサンス美術には、「古代の復活」「自然への接近」「北方美術の影響」が重要な3つの要素であるという。そして、それら3つの要素をフェデリーコ公の時代のウルビーノは十分に満たしていたという。ルネサンス期に活躍したパオロ・ウッチェッロや、ピエロ・デッラ・フランチェスカ、ルチアーノ・ラウラーナ、そして、北方フランドルからヨース・ファン・ヘントを招き、ルネサンスの宮廷芸術の開花に大きく貢献。そして宮廷芸術の町は才能高きラファエロを生み出した。
小針氏の講義は、ウルビーノのドゥカーレ宮殿内のフェデリーコ公の書斎とコルプス・ドミニ信心会の教会の中央祭壇画についての話にも及んだ――
フェデリーコ公の書斎は、1470年代につくられたドゥカーレ宮で、もっとも有名な部屋である。内部の壁は寄木細工でつくられている。壁上部には28人の肖像が掛けられている。描かれている肖像は過去と詩人や学者や聖職者たち。この書斎をみるだけで、フェデリーコ公の教養の高さが感じられる。これらの28人の肖像画と、コルプス・ドミニ信心会の教会の中央祭壇画の両作品ともヨース・ファン・ヘントの作品であるとされている。特に注目した点は、中央祭壇画とともに制作された、祭壇画の下部におかれる絵画(プレデッラ)がパオロ・ウッチェロによるものであること。当時、ルネサンスの画家として活躍していたパオロ・ウッチェロが中央祭壇画ではなくプレデッラを描き、当時、イタリアでほとんど活躍していなかった北方の画家であるヨース・ファン・ヘントが中央祭壇画を描いている。このような点に、フェデリーコ公の北方芸術に対する評価の高さが感じられる、と。

ウルビーノとルネサンス、北方との関係などについて講義される小針氏
私(加藤)は、ウルビーノという街を以前から知っていましたが、訪れたことは一度もありません。今回、はじめてウルビーノの魅力をたくさん知ることができました。実際にウルビーノを訪れ、自分の目で書斎や中央祭壇画、そして宮廷芸術の生まれた街並みを是非見てみたいと思いました。
岡村氏と小針氏の講義を通して、新たなルネサンスを知ることができました。お二方とも、わたしたちと違ったルネサンスの見方をたくさん知っています。わたしたちも多くの文化・芸術を、さまざまな角度から見つめていければいいと思います。
また、今回、岡村氏と奥様のご厚意で、「アテネの学堂」と「春」のパネルを、それぞれ静岡県立大学とSPACに寄贈していただくことになりました。
全2回の楕円堂講座が終了しました。また、今後もムセイオン静岡の主催で文化・芸術・歴史を学ぶ総合的な講座を実施していく予定です。
(加藤 志帆)
今回のテーマは、「日本人の知らないルネッサンスの見方」。静岡県立大学・立田洋司(たつた ようじ)先生を講師に、写真家・岡村崔(おかむら たかし)氏と静岡県立美術館・小針由紀隆(こはり ゆきたか)学芸部長をゲストに迎えた。
木苗直秀静岡県立大学学長の挨拶
受講者に講義を行う立田先生
岡村崔氏は長年イタリアを中心に美術作品や教会を撮影してきた写真家。特に、ヴァチカン・システィーナ礼拝堂のミケランジェロの壁画を撮影した功績は、世界でも高く評価されている。イギリス美術史家ケネス・クラークは、「岡村はミケランジェロのベールを剥がしてしまった」という言葉を残したそうだ。
当日、小講堂内には、岡村氏自身が撮影したヴァチカンのラファエロ作「アテネ学堂」とボッティチェリ作「春」の写真の大型パネルを展示。2つのパネルと写真スライドを見ながら、岡村氏のイタリアでの貴重な経験や逸話を聞いた――
写真の撮影方法も現在とは違い、大型の特殊なカメラを使用。システィーナ礼拝堂での撮影では天井部を撮影するときなど、18メートルほどのやぐらを組み立て、そこに一人で昇り、絵の真下にもぐりこんで撮影。しかも、夕方から夜にかけての数時間、真っ暗な礼拝堂中で、ミケランジェロの偉大な作品に囲まれて、たった一人で。ミケランジェロの亡霊から声をかけられたのでは…と思うくらいに、ミケランジェロの魂が絵の中に残されていることを感じたそうだ。
そして、「アテネの学堂」と「春」の細部写真を見ながら、両作品の解説をしていただいた。今、これらの作品を実際にヴァチカン美術館やウフィッツィ美術館を訪れ、じっくり鑑賞しようとしても、絵に近寄って眺めることや、長時間その場に残って鑑賞するということが難しくなってきている。が、この講義では、登場している人物の表情や、身に着けている装飾品について、植物や、絵の色味など、今までじっくり見ることのなかった点をじっくり観察することができた。
今回寄贈していただいたパネルについて説明される岡村氏
小針氏は、静岡県立美術館開館当初から活躍されてきた学芸員で、静岡や日本の美術館の発展に大きく携わっている方。静岡県立大学でも何度も講義をされ、ムセイオン静岡の主要メンバーを担っている方でもある。ご専門はイタリアを中心とした西洋美術で、イタリアのさまざまな土地を歩き、多くの美術作品の研究を行っている。また、イタリア美術と深く関係する北方フランドル地方やフランスの美術についても研究をされている。
今回の小針氏の講義は、ルネサンス期のウルビーノにおける宮廷美術について――
ウルビーノという街を知っている人は日本ではあまりいない。ウルビーノは、イタリア、マルケ州の内陸の街。当時その地を治めていたモンテフェルトロ家が輩出したフェデリーコ公の時代が一番栄えていた。フェデリーコ公は傭兵隊長(コンドッティエーリ)としてとして活躍していたが、一方で人文主義的教養も備え、芸術庇護にも力を注いだ人物としても有名だった。
小針氏は、ルネサンス美術には、「古代の復活」「自然への接近」「北方美術の影響」が重要な3つの要素であるという。そして、それら3つの要素をフェデリーコ公の時代のウルビーノは十分に満たしていたという。ルネサンス期に活躍したパオロ・ウッチェッロや、ピエロ・デッラ・フランチェスカ、ルチアーノ・ラウラーナ、そして、北方フランドルからヨース・ファン・ヘントを招き、ルネサンスの宮廷芸術の開花に大きく貢献。そして宮廷芸術の町は才能高きラファエロを生み出した。
小針氏の講義は、ウルビーノのドゥカーレ宮殿内のフェデリーコ公の書斎とコルプス・ドミニ信心会の教会の中央祭壇画についての話にも及んだ――
フェデリーコ公の書斎は、1470年代につくられたドゥカーレ宮で、もっとも有名な部屋である。内部の壁は寄木細工でつくられている。壁上部には28人の肖像が掛けられている。描かれている肖像は過去と詩人や学者や聖職者たち。この書斎をみるだけで、フェデリーコ公の教養の高さが感じられる。これらの28人の肖像画と、コルプス・ドミニ信心会の教会の中央祭壇画の両作品ともヨース・ファン・ヘントの作品であるとされている。特に注目した点は、中央祭壇画とともに制作された、祭壇画の下部におかれる絵画(プレデッラ)がパオロ・ウッチェロによるものであること。当時、ルネサンスの画家として活躍していたパオロ・ウッチェロが中央祭壇画ではなくプレデッラを描き、当時、イタリアでほとんど活躍していなかった北方の画家であるヨース・ファン・ヘントが中央祭壇画を描いている。このような点に、フェデリーコ公の北方芸術に対する評価の高さが感じられる、と。
ウルビーノとルネサンス、北方との関係などについて講義される小針氏
私(加藤)は、ウルビーノという街を以前から知っていましたが、訪れたことは一度もありません。今回、はじめてウルビーノの魅力をたくさん知ることができました。実際にウルビーノを訪れ、自分の目で書斎や中央祭壇画、そして宮廷芸術の生まれた街並みを是非見てみたいと思いました。
岡村氏と小針氏の講義を通して、新たなルネサンスを知ることができました。お二方とも、わたしたちと違ったルネサンスの見方をたくさん知っています。わたしたちも多くの文化・芸術を、さまざまな角度から見つめていければいいと思います。
また、今回、岡村氏と奥様のご厚意で、「アテネの学堂」と「春」のパネルを、それぞれ静岡県立大学とSPACに寄贈していただくことになりました。
全2回の楕円堂講座が終了しました。また、今後もムセイオン静岡の主催で文化・芸術・歴史を学ぶ総合的な講座を実施していく予定です。
(加藤 志帆)
2011年01月26日
What is Museion? フォト・エキシビジョン開催中!
こんにちは。
ムセイオン静岡のブログを担当しています、静岡県立大学3年、加藤志帆です。
現在、県立大学の学生数名で、大学の方々にムセイオン静岡をもっと知ってもらおうと"What is Museion?" というPRイベントを行っています。
イベントでは、12月に県大写真部さんの協力のもとおこなったゲリラ・ポートレート撮影会にて撮影した、県立大学の学生・教員・職員のみなさんの写真を使ったフォト・エキシビジョンを行っています。
【日時】
1月24日~1月28日
13時~18時
【場所】
静岡県立大学・はばたき棟 1階
1月17日~21日には、各学部棟のカレッジホールにてフォト・エキシビジョンを行いました。
そして、更に多くの方にフォト・エキシビジョンを見てもらいたいと思い、はばたき棟での展示をおこなわせてもらうことができました。
そして、このイベントを通して、多くの方に「ムセイオン静岡」を知ってもらいたいです。
加藤志帆
ムセイオン静岡のブログを担当しています、静岡県立大学3年、加藤志帆です。
現在、県立大学の学生数名で、大学の方々にムセイオン静岡をもっと知ってもらおうと"What is Museion?" というPRイベントを行っています。
イベントでは、12月に県大写真部さんの協力のもとおこなったゲリラ・ポートレート撮影会にて撮影した、県立大学の学生・教員・職員のみなさんの写真を使ったフォト・エキシビジョンを行っています。
【日時】
1月24日~1月28日
13時~18時
【場所】
静岡県立大学・はばたき棟 1階
1月17日~21日には、各学部棟のカレッジホールにてフォト・エキシビジョンを行いました。
そして、更に多くの方にフォト・エキシビジョンを見てもらいたいと思い、はばたき棟での展示をおこなわせてもらうことができました。
そして、このイベントを通して、多くの方に「ムセイオン静岡」を知ってもらいたいです。
加藤志帆

