2016年11月22日

静岡県立大学:H28年度しずおか学科目群「ムセイオン静岡:舞台芸術A」第2回

「演劇は何の役にたつか?~「リアル」なものについて考えること~」

 静岡県立大学の全学共通科目の中にある「しずおか学」は、地域と連携しながら静岡の特性と魅力を学ぶ選択必修科目となっています。その中の科目に「ムセイオン静岡」の授業があります。この授業では、ムセイオン各機関から講師を招いて講義をしてもらうだけでなく、実際に美術館や劇場で鑑賞・観劇をしたり、研究施設の見学を行うということもあり、人気があります。

 今回は静岡県舞台芸術センター(以下:SPAC)文芸部の横山さんを招いて「演劇は何の役にたつか?~「リアル」なものについて考えること~」というテーマの授業を行っていただきました。

静岡県立大学:H28年度しずおか学科目群「ムセイオン静岡:舞台芸術A」第2回


 私(望月)は、しょっぱなから、「パワーポイントは頭を悪くする?整理された情報だけを選択していると考えなくなる。」という言葉に衝撃を受けました。そして、「大学に来て朝早くから授業に出る、顔を合わせること」の意味を考えるところからこの授業は始まりました。
 横山さんの講義内容を簡単にまとめると次のとおりです。

1.なぜ演劇なのか? 
 全学共通科目は文系・理系関係なくさまざまな学部の学生が選択している。教養教育の重要性は、大人になってからもずっと後になって気づくもの。はじめ生物学を専攻した横山さん。しかし、「ミドリムシの役に立ちたいか?増えれば幸せか?」というと否だった。「人は人のために役に立ちたい」「ことばというものが本当に人に届いているのか」ということに対して、演劇なら「目に見えて何らかの反応があり、そこにリアルなものがあると信じることができる」と演劇の道へ。

2.信仰、現実、真理 
 経済が良くなれば人は幸せになる?!と言われているが、日本は年間3万人弱が自殺している。日本の宗教は、仏教より神道、神道よりもっと多くの人が“経済”=数字で測れるこれ以上リアルなものはない、わかりやすくいえば“貨幣”=日本銀行券というものを信仰しているのではないか。しかしたとえば、イスラムでは信仰が重要で、偶像崇拝が禁じられているため貨幣=価値とはなっていない。信じているから成り立っている“経済”や“国家”。国というものは領土か、貨幣か、何が価値なのか。

3.メディアと「真正な社会」
 「皆はなぜ日本という国があると思うのか?メディアによって作られたものではないか?」横山さんは、「日本があると思う理由は?」と学生とやりとり。学生の回答を聴いて、首をかしげたり、少し考えてから答えたりする横山さん。
 多くは教育とメディアによって作られている。たとえば1対1で話すより1対10の方が共有できるものが減るということや、TVや映像よりも目の前で話している方がより伝えにくい情報が伝えられるということ。「なるほど」(望月)。

 昔は日本では能、ヨーロッパ(特に西ヨーロッパ)では、フランスはモリエール、英語はシェイクスピア、ドイツはゲーテなど多くの場合演劇が「意図が通じるもの」として”国語”を作ってきた。
 今は活字やTVやネットが発展し、対大勢では通じないものを演劇が担ってる。昔は夢をみせたりするものだったが、今は逆にリアルなものに触れる機会になっている。虚構に触れる時間が増えていて、虚構と実際生きているリアルの間のズレを埋めるためにも演劇(劇場)は役に立っているはず!

静岡県立大学:H28年度しずおか学科目群「ムセイオン静岡:舞台芸術A」第2回


  おおむね以上のようなお話でした。
 1講義時間まるまる興味を引くお話で、何度も学生に考えさせる質問を投げかける横山さん。いつ話しかけられるかわからないので、寝るスキもスマホをいじる時間も与えず、身近な例えでリアルと虚構、自分の頭で考えることの重要さを教えてもらいました。そして次回は実際にSPACの演劇を観に劇場へ行くのが授業です。そこで学生は何を感じ、何を受け取って帰ってくるのでしょうか。とても楽しみです。
            
文:ムセイオン静岡事務局 望月


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Posted by museion2009 at 10:47│Comments(0)ムセイオン静岡:授業
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